install
  1. 我が家には「襖越しに猫に話しかけてはいけない」という掟がある。

    真夜中、人間が寝静まる頃、遠くからふたつの音が近付いてくる。
    とっとっとっとっとっとっと(←猫の足音)
    ごろごろごろごろぐるぐるぐるる(←猫の喉音)
    それは人間の部屋の前までやってくると、襖を前足で踏み踏み、鼻をふがふが鳴らしつつ、
    寝ている人間に愛らしい声で呼びかけてくるのだ。

    「なーん(お部屋にいれてよー)」

    これは人間が目覚めるまで続けられる。
    その愛らしい声に根負けして、そっと戸を開けてやる分には構わない。
    だが、戸を開ける前に、決して猫に話しかけてはならない。
    猫の添い寝テンションがメントスコーラの如く噴き上がってしまうからだ。

    「にゃー!にゃーん!ぐるぐるぐるるうるるふがふが」
    (人間いた!一緒に寝る!部屋入る入るったら入ぁうぇ!)

    夜の静寂を破るのは、
    ・襖がバリバリと切り裂かれる音
    ・襖の骨組みがメキメキバキリと折れる音
    ・こじ開けた穴を猫が無理矢理潜り抜けるメキメキという音
    ・猫が部屋へ降り立った、トンという足音

    そして呆然とする人間の枕元に、喉をゴロゴロいわせた猫が当然のように
    「布団開けて?」と擦り寄ってくる。
    人間の腕枕で眠る猫と、隙間風の入り込む破壊された襖。
    呆然とする人間の部屋に、真夜中の破壊音に驚いた家族がやってくる。
    穴の開いた襖を見られ、人間はしこたま怒られるのだ。

    襖越しに猫に話しかけてはいけない。